相続した不動産の登記をしないリスクやデメリットを解説

司法書士
榎本亮冴

今回は、相続した不動産の名義変更登記をしないリスクやデメリットについて解説していきます。

不動産を相続したら、通常、不動産の名義変更をして自分名義にしておきます。そもそも不動産というのは、土地や建物のことを指していて、それ以外の宝石や時計などを動産といいます。動産と異なり、不動産は数千万円と高価なものが多いですから、トラブルが起こった際は、動産などよりも大きな問題に発展しやすいことは、何となくイメージがつくと思います。

そこで、その問題をできるだけ回避し、自分から不動産の権利を守りに行くのが不動産の登記です。

相続が起こった際に行う不動産の名義変更登記を、一般的に相続登記とっています。不動産を売買したときは99%名義変更の登記をしますが、相続の時は登記せずにそのままというケースは非常に多いのが現状です。

相続登記には期限も義務もなのか?

その理由に、現状では相続登記はいつまでにしなければならないとかはありませんし、登記も任意だからだと思います。

ただ、義務化については議論が進み、2024年から相続登記の義務化で概ね決まっていますのでいままで通りというわけにはいきません。

相続登記をしないリスク

ここで、登記をしないリスクはどこあるでしょうか。簡単に不動産登記の大原則をお話します。、実質的には義務的なほど重要な意味があります。例えば、AさんがBさんとCさんに甲不動産を順次売却した場合、どちらが所有者になるのかという問題があります。不動産は1つなので、所有者はBかCのどちらか一方になります。

先に買ってお金を払っていたBだと思うかもしれませんが、Bよりも先にCが自分の名義変更の済ませると、Bはお金を全部払っていても所有者になれません。これが不動産特有のルールです。

自分名義にない不動産は、実施的には、誰のものか分からない浮遊状態ということになります。

相続登記も同様に、自分名義にしておかないと、他人に乗っ取られたり、大きなトラブルに巻き込まれてしまう可能性は十分あり得ることです。

他の相続人の持分を差し押さえられたり、売却されたりするおそれがある

先ほども言いましたが、不動産は、基本的に先に自分名義の登記を入れた人が勝ちという法律になっています。先に譲り受ける約束したとか、お金を払ったといったことでは足りません。これは、遺産分割協議で他の相続人の自宅持ち分を引き取った部分も同じです。大前提として、相続した不動産は、他の相続人と一旦共有している状態となっています。

これを誰の単独所有にするかを決めるのが遺産分割協議ですから、協議によってあなたが家の所有者として決めたとしても、相続登記しない間に、他の相続人が誰かに持ち分を売ってしまったり、お金に困窮していて、差し押さえられてしまうと、協議で引き受けた分の不動産の所有権を失ってしまいます。

ですから、現在の相続登記は義務ではありませんが、実質義務と言っていいとでしょう。

2017年に積水ハウスが地面師によって70億円の被害にあったことが話題となったことがあります。地面師というのは、地主になりますまして、勝手に誰かに売り払ってお金を騙し取る詐欺師のことですが、この事件は、好立地で時価100億はする土地を、積水ハウスが地面師から購入し、55億円ほど騙し取られた事件です。

これは、相続登記してなかったから起こった事件ではありませんが、実際にこうやって事件が表面化しているのは、ほんの一部であって、ほとんどは未解決みたいです。今は、印鑑証明書や権利証の偽造の精度が上がっていますので、本人に成りすましたり、登記簿上の名義を勝手に変えられるといったことが、どの物件でもあり得ると思います。

特に担保のついていない物件や、更地、ずっと登記の名義に動きがなく、所有者が高齢なケースの方が、地面師が狙いやすいという説もありますので、所有不動産は注意しないといけません。すくなくとも自分名義にはして、保全しておく必要があります。

相続登記せず自分名義でないと生じるデメリット

次に、自分名義でないと生じるデメリットについてです。

それは、不動産が売却ができない点と将来的に権利関係が複雑になることが挙げられます。

不動産を売却した場合、買主への名義変更をしますが、その前提として、不動産を取得した相続人名義への変更登記が必要になります。

また、名義変更を先延ばしにしていて、いざ、売却するために登記を行おうとしても、その間に、他の共同相続人が亡くなっていると、その人の相続人の同意が必要になります。見ず知らずの親族で、お金に困っていたりすると、同意に応じる代償としてのハンコ代を求めたりするケースもあります。

資金が必要なのに、スムーズに不動産の売却が進められないと、買いたたかれたり、契約が頓挫することもありますので、早めに自分の名義にしておきましょう。

相続登記と 税金の免税措置

最後に税金の免税措置についてです。

相続登記が一代前から未了の場合は、2021年3月31日までであれば、登録免許税の免税措置が実施されていますのでお得です。

例えば、祖父の代から名義が変わっていない場合は、この特例を使えば登録免許税が免除されます。

登録免許税というのは、土地と建物の名義を変更する際にかかる税金です。

この金額は、土地や建物の評価額に対して0.4%(1000分の4)の税率かけると算出できます。

評価額は、毎年役所から送られてくる固定資産税課税明細書に記載があります。

例えば、土地の評価額が3000万円、建物の評価額が1,000万の場合、これに0.4%をかけますので、登録免許税は16万円です。

大きなコストカットにもなりますので、未了の場合は早めに手続きした方がいいでしょう。

相続不動産の売却は相続後3年10か月以内がお得

また、相続した不動産の売却する予定の場合は、相続開始後3年10か月以内に売却すると、譲渡所得税が安くなる特例を受けられる可能性があります。

不動産の譲渡所得税は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた額に、一定の税率をかけて算出します。

取得費というのは、不動産を購入費用などですが、先祖代々の土地だと、買ったときの価格が分からない場合があります。この場合は、売却価格の5%を取得費とすることになっていますので、譲渡所得税の負担が大きくなることがよくあります。

この特例は、相続時に支払った相続税を、取得費に加算できるという特例ですので、適用できれば、譲渡所得税の負担が減らすことが可能です。

したがって、この特例を受けたい場合は、相続登記についても、遅くとも売却までに済ませなければなりません。

以上、相続登記についての解説です。

遺産相続なら「ユーべスト司法書士事務所にお任せ!」

ユーべスト司法書士事務所では、遺産相続に関するご相談を承っています。

お気軽にお問い合わせ下さい。

監修者プロフィール

榎本亮冴
榎本亮冴司法書士
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。