相続のトラブル事例から学ぶ失敗する遺産分割の問題3選

司法書士
榎本亮冴

今回はトラブル事例から学ぶ遺産分割協議の注意点3選について解説していきたいと思います。

相続のトラブルは、遺言書の内容が曖昧だったり、親の介護負担の不平等などの、生前から問題となる可能性を秘めているものも多いですが、今回は、遺産分割の話がまとまったのにも関わらず、協議の内容が曖昧だったために、後々にトラブルになってしまうケースについて触れていきたいと思います。

遺産分割協議のやり直し行うと、実は、贈与税や所得税が課せられるといった、税務上大きなデメリットになる可能性もございますし、なにより親族間で疲弊してしまうのは最も避けたいことだと思います。

この動画をみることで、遺産分割協議のトラブルになり得る論点を知り、未然に防ぐことができます。

遺産に株式など投資商品がある場合

まず、遺産に株式など投資商品がある場合についての注意点です。

遺産に株式などの値動きのある投資商品が含まれている場合で、代償分割をする場合は注意すべきポイントとなります。

例えば、遺産が株式等の投資商品で時価1億円だったとします。相続人は子ABの2人で、Aが株式を引き受け、代わりにBに5,000万円を支払うといった遺産分割協議をしたとします。しかし、単純にこのような決め方をすると、後日トラブルになる可能性があります。

Aとしては、5000万円の代償金を支払うため、後日株式を半分解約するなどして、資金を工面することになると思いますが、実際、遺産分割協から数日後に株価が大幅にぶれている可能性があります。

協議したときは1億円でも、解約する時には、1億2000万円に上がっていることもあれば、7000万円まで下がっていることも考えられます。

いずれの場合も、協議で決めた5000万円の代償金では、損得がでてきますから1億2000万円を2分の1するのか、7,000万円を2分の1するのかなどと、協議したときの当時に時価で単に決めてしまうと後日このようなトラブルが起こりえます。

ですので、値動きのある株式などを分ける際には、協議後の価格の変動にかかわらず、いつの時点の時価を基準とするのかまで合意しておくことが重要です。例えば、相続開始時の時価とか、遺産分割協議時の時価、ある一定期間の平均値などが考えられますが、どうのように決めるかは当事者の自由となります。

ちなみに、相続の際の財産の価格は、相続税評価額という相続税を計算する上での価格があります。これは、相続税を課すための基準価格ですので、時間が経って株価が変動しても一律の価格が算出できます。

一方で、遺産分割協議で決める財産の評価は当事者間で自由に決めることができます。基準としては、遺産分割協議が成立したときの時価となりますが、もちろんこちらに拘束される必要はありませんので、どのような価格で合意しても問題ありません。

特定の財産を引き受ける代わりに、金銭を支払う代償分割の場合は、その価格について当事者がこじれてしまうことが多々ありますので、値動きのある投資商品を分ける際は、いつの時点の時価を基準とするのかまで合意しておくといいと思います。

遺産に不動産がある場合

次は、2つ目の遺産に不動産がある場合についての注意点です

不動産の場合はそれぞれ全く同じものがありませんので、株式のように終値といった決まった取引価格がありません。ですから、遺産分割協議がまとまらない原因で一番多いのは、不動産の価格評価についてではないかと思っています。

不動産は、相続税を計算するための相続税評価額と、遺産分割時の基準になる実際の取引価格の2つの価格があります。相続税の評価額は実際の取引価格よりも低く設定されて、基本的に一律の価格がわかりますが、取引価格の方は、需要によって幅があることがなんとくイメージがつくのではないでしょうか。

例えば、相続人が兄弟のABで、遺産が甲不動産と乙不動産だったとします。甲不動産の相続税評価額は1億円で想定価格は2億円。乙不動産の相続税評価額は5,000万円で、想定価格は1億円とします。Aが甲不動産に住んでいる場合では、Aが甲不動産、Bが乙不動産を取得するのが通常あり得ると思います。

そうすると、不動産の価値に差がありますので、平等を望む場合は、AはBに対していくらか代償金を支払う必要が出てきます。不動産の時価は一律ではありませんから、Aとしては、甲不動産の取引価格を安く見積もり、乙不動産の価格を高く見積もった方が、代償金の額が低くなりますので、有利ですし、Bはその逆です。ですから、不動産の分割協議では、まずこの価格決定が大きな問題となってきます。

また、仮に価格について合意したとしても、Aの場合は、小規模宅地の特例が適用できれば、甲不動産の相続税評価額は、80%割引となります、2000万円の評価になります。

小規模宅地の特例というのは、自宅を相続する際の相続税を大幅に下げる特例です。AがBに代償金として5000万円をしはらっていれば、課税価格は0円です。

一方で、Bの乙不動産に特例が適用できなければ、相続税評価額の5,000万円に加えて、代償金で受け取った現金5000万円が相続税の課税対象となりますので、トータルで1億円に課税されることになります。このように小規模宅地の特例の適用有無で、納税負担が大きく変わります。

ですので、不動産の評価で、価格の利害が対立する場合は、決定させる必要がありますが、この方法として、一般的には、お互いに取った不動産会社の査定の中間値であったり、相続税評価額を80%で割り戻した価格で決定することが多いのではないかと思います。

また、特に小規模宅地の特例が適用できる場合は、税負担後の均等まで考慮するかどうかについて合意しておいた方が、後々のトラブルにならずに済むのではないかと思います。

遺産の一部を先行して分割協議する場合

次は、3つ目は遺産の一部を先行して分割協議する場合の注意点です。

例えば、できだけ早くまとまった資金が必要な相続人がいるとか、遺産の自宅は同居している相続人に先行して相続させるといったことは、すべての遺産が確定する前でもあり得るケースだと思います。

遺産分割協議は、一部について先行して行うことも可能ですし、当事者の合意があればやりなおすことは可能です。

このように、遺産の一部を先行して分割協議する場合の注意点として、万が一、遺産分割講義をやり直すことになった場合に、実は、贈与税や所得税が課せられてしまうといった、税務上のリスクがあげられます。

国税庁の通達には、このようにありますが、分かりやすくまとめると

相続開始後に相続により取得した財産を共同相続人に分属させることを「遺産分割」いいます。

なので、当初の遺産分割により相続人に分属した財産を、分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、遺産分割で取得したものとはならないし、課税上は相続とは取り扱いません。ということになります。

ですので、新たな財産の移転として評価されてしまえば、内容によって贈与税や所得税が課税されてしまうことになります。

もちろん、相続税申告が不要とか、不動産がないようなケースで、単に協議書を紙で作った段階であれば、課税などの問題にはならないと思いますが、相続税の申告をしていたり不動産の登記が絡む場合は、客観的に記録がのこりますので、後日指摘される可能性は高いのではないかと思います。

先行した一部の遺産分割をやり直す例として、特定の相続人が生前に多額の贈与を受けていることが分かったとか、協議中に遺産の価値が大きく変動してしまったとか、気持ちが変わって別の財産が欲しくなったなどいろいろと考えられますが、後日発覚した状況次第では、遺産の一部の取り決めを撤回したくなるケースもあると思います。ですので、極力一部遺産分割はせず、すべての遺産を調査できてから、分割協議できることが望ましいです。

また、調査し終えても、後日新たに遺産が発見される可能性もあり得ますので、その場合に備えて、その財産の分け方や取得者を遺産分割協議書で決めておいた方がいいと思います。

以上、遺産分割協議での注意点3選です。

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監修者プロフィール

榎本亮冴
榎本亮冴司法書士
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。