相続不動産の共有解消方法6選・相続した不動産で損しないための使える知識を解説

司法書士
榎本亮冴

今回は、相続不動産の共有状態を解消する方法について、6つご紹介していきます。

共有というのは、1つのものを一緒に所有している状態ですが、基本的に1つのもに所有者は1人です。相続が起こると、必然的に各相続人の相続分に従って不動産は一旦共有状態となります。ですから、これを誰かの単独所有にするのは遺産分割協議を行いますが、不動産を均等にはわけられないという理由から、共有状態のままにしておくケースはあると思います。

ただ、一般的に相続不動産の共有状態は問題の先延ばしと言われておりますが、代を重ねるごとに、共有者がどんどん増えていきますので、いざ処分をしようとしたときには共有者が何十人もいて不可能ということも起こります。私もこの点、共有状態はデメリットはあってもメリットはほとんどないと考えております。

そこで、今回は、共有状態のルール踏まえつつ、解消方法にはどのような方法があるのかを解説していきたいと思います。

相続不動産の共有ルール

まず、共有にはルールがございます。共有者には、単独で行えるもの、共有者の過半数の同意で行えるもの、全員の同意を必要とするものにわけて定められています。

単独で行っていいとされているものには、例えば屋根に穴が開いたので、単独での修理工事の依頼や、土地を不法に占拠している人がいた場合に、単独で訴訟を起こして追い出すことができます。また、自分の持分を売ることも単独で可能です。

共有者の過半数の同意で行えるものには、共有物の短期間の賃貸、あるいは解除すること、小規模なリフォームなどが考えられます。過半数というのは頭数ではなく、持分割合ですので、2人いても、一方が10分の9の持分の場合は、これらの行為は実質単独で行えることになります。

全員の同意を必要とするものには、共有物の長期の賃貸、土地の上に建物を立てる、アスファルト舗装して駐車場に変える、共有している建物の大幅なリフォームや取り壊しなどが考えられます。不動産全体の売却も全員の同意が必要です。これらの行為は、少数持分の人の意見でも無視できないことになっています。

このように、所有しているからといって、完全に自由に扱えるわけではありませんので、例えば、他の共有者が勝手に大がかりなリフォーム工事をしようとしていたら、他の共有者は阻止する権利があります。一方で、自己の持ち分のみであれば、自由に売却することができますので、実際に、共有の解消には、この共有持ち分の売却というカードを上手く活用するほかないかと考えられます。他の方法と比較しつつ見ていきたいと思います。

共有者全員で不動産を売却する方法

1つ目は、共有者全員で、不動産を売却する方法です。こちらの方法は、売却したお金を共有者で分ければいいので、他の方法に比べて一番簡単ですし、平等に別けることが可能です。そもそも、共有者全員の足並み揃わないことが問題となることが多いと思いますが、自分の持ち分のみを売却するよりも、高く売れる傾向にありますので、足並みを揃えて売却してしまった方がメリットとなるのではないかと思います。話がまとまらない場合の最終手段として、訴訟がありますが、裁判となっても最終的には、不動産を売却してその金額を分ける形になります。この落札金額は市場価格の7,8割程度となることもありますし、時間と費用をかけて裁判をするよりも、早期に売却した方がメリットになる点も判断材料になります。

また、共有者が第三者に自分の持ち分を売却した場合、その買主に賃料を請求されるかとか、持分の買い取り交渉されるといった事態が考えられますので、面倒ごとを避けたい場合は、全体売却への合意の交渉手段になると考えられます。

ですので、話し合いが可能な状況で、不動産の保有を望まない場合は、この方法が一番スムーズといえます。

自分の共有持ち分を第三者に売却する方法

2つ目は自分の共有持ち分を第三者に売却する方法です。

自分の持分だけ売却して、自分だけ共有関係を解消することが可能になります。ただし、全部を売却するよりも、一部売却の方が一般的に2、3割は価格が目減りする傾向にあるようですので、その点はデメリットになります。また、持分売却後は、他の共有者と持ち分を買い取った者との共有関係になりますので、売却する相手の意向次第では、共有者の間で揉めてしまう可能性はあります。持分を買い取ってくれる相手には、主に業者や個人投資家が考えられますが、いずれも持分を買い取る理由は主に次の3つが考えられます。

➀共有者が住んでいる場合に、賃料請求し、そのまま収益不動産として活用する

②共有者から持分を買い取って、不動産全体で利益を売る

③買い取った持ち分を、共有者や第三者に買い取ってもらう、という方法です。

第三者の意向次第では、共有者へ買い取りを迫りつつ分割訴訟を起こすことも考えられますので、買い手の意向などを踏まえて慎重に売却することが必要になると思います

共有持ち分を共有者間で売買する方法

3つ目は、共有持ち分を共有者間で売買する方法です。

この方法は、自分の持分を共有者に買い取ってもらうか、あるいは、自分が共有者の持分を買い取る方法です。共有者が不動産の保有を希望していて、資金的に余裕がある場合であれば、2つ目の方法と異なり、第三者の介入もなく、価格の合意さえできれば、この方法が一番スムーズであると考えられます

第三者の場合は、そもそも買い手がつかない場合もありますし、見つかっても相場よりも目減りする点や、仮に裁判となった場合でも、相場よりも安く売れる可能性があること、時間や費用などを考えると、他の共有者が買い取る方がメリットがあると言えます。

なお、市場価格からあまりにも安く持ち分を売買すると、その部分に関して贈与税が課せられることもありますので、注意が必要です。一般的に市場価格の8割以下は低廉譲渡としてのリスクが高まる考えた方がいいのではないでしょうか。

もちろん無償で持分移転した場合は、譲り受けた共有者に贈与税が課せられます。

自分の共有持ち分を放棄する方法

4つ目は、自分の共有持ち分を放棄する方法です。

この方法は、持分を一方的に放棄してしまう方法で、対価もありません。放棄した持分は他の共有者のものになりますので、贈与税がかかります。また放棄事体は一方的に可能ですが、持分放棄による不動産の名義変更は共同で行う必要があります。自分の持分に価値ある場合は、基本的にとらない方法だと思います。

土地を分筆して分ける方法

5つ目は、土地を分筆して別ける方法です。

土地の分筆というのは、土地に境界を設けて、1つの土地を完全に2つ以上の土地にすることをいいます。分筆して、物理的に2つに分けることで、それぞれの土地を単独の所有にすることができますので、抵当権を設定して融資をうけたり、売却したりすることも単独で可能です。ポイントとしては、均等に別けられるかや、分筆に必要な測量費用などにかかる数十万の出費や期間がかかることがあげられます。建築基準法の要件をみたしつつ、価値を維持しながらできるだけ平等な分筆が可能な土地である必要がありますので、分筆して分けるというのは、そこまで採用されていないのではないかと思います。

共有物分割訴訟で分ける方法

6つ目は、共有物分割訴訟で分ける方法です。

共有者間で足並みが揃わず、持分移転も合意に至らない場合、最終的な解決方法としては、裁判になります。

裁判になった場合の分割方法は、3つあります。

現物分割

1つは、土地を分筆してそれぞれで分けるか、2以上の不動産をそれぞれで分ける物的分割と言われるものです。実際に分筆を行うケースは少ないと思いますので、この方法はほとんど採用されず、次のいずれかになるものと考えられます。

換価分割

2つ目は、換価分割と言われる方法で、不動産を売却した価格を共有者に配当する方法です。売却方法は、当事者間で共同して売却活動を行うか、それが不可能の場合は競売して落札価格を共有者に配当する形になります。競売となった場合は、相場の7,8割で落札される可能性があることが懸念点になりますが、これは実際に物件ごとにより異なり、市場価格付近で売れることもあるようです。

代償分割

3つ目は、共有者の一方が共有持ち分の買い取りを希望する場合で、資金を工面できる場合は、一方によって買い取る代償分割の方法になります。この場合は裁判の中で不動産の価格の合意をしていくことになります。

この場合の価格交渉は、当事者間で不動産会社から取得した、妥当だと思う査定根拠を示しあう形になると思います。

これでも合意に至らない場合は、裁判所が選任した不動産鑑定士の鑑定評価で決まる形になりますが、鑑定評価には数十万の費用がかかりますので、基本的には、当事者間の出した査定の中間で合意に至ることが多いのではないかと思います。

共有物分割訴訟を起こすには、事前に当事者で協議して、それでは解決できなかった事情が必要ですので、最終的に訴訟を考える場合は、協議した形跡を遺しておきましょう。

以上、6つの方法をご紹介してきましたが、どの方法がいいかは、資金の有無、関係性や、意向次第になるものと思います。

相続した不動産を売却する場合は 取得費加算の特例

最後に、売却するなら早めの方がお得かもしれない点について解説したいと思います。相続した不動産を売却する場合は、譲渡所得税が課税されます。

譲渡所得税は売却価格-(取得費+売却費用)-特別控除によって算出することができます。取得費というのは、主に不動産の購入価格です。

相続不動産の場合は、取得費が分からないケースもございます。その場合は、売却費用の5%を取得費にすることとされいますが、これだと大きく譲渡所得税が課税される形となります。

例えば、3,000万円で売れた場合、取得費は5%の150万円です。売却費用に150万円かかった場合は、2,700万円に課税さる形となります。

そこで、これを軽減する特例に・取得費加算の特例というものがございます。

相続した不動産を売却する予定の場合は、相続開始後3年10か月以内に売却すると、この特例を受けられる可能性があります。

この特例は、相続時に支払った相続税を、取得費に加算できるという特例ですので、適用できれば、譲渡所得税の負担が減らすことが可能です。実際には、他の軽減特例なども踏まえて税理士に確認した方がいいでしょう。

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監修者プロフィール

榎本亮冴
榎本亮冴司法書士
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。