遺留分の生前対策5つの方法を解説

司法書士
榎本亮冴

今回は、遺留分を侵害しないようにする、生前の対策を5つご紹介していきます。

遺留分というのは、各相続人に最低限保証される相続できる権利のことをいいます。相続人の内、長男に相続財産の全部を相続させるとった内容の遺言書を書いたとしても、他の相続人は、遺留分請求をすることで一定の相続財産を取得することができます。

つまり遺留分は、財産を遺す人が、特定の人に財産を集中させるにはどうすればいいかということにもなります。

遺留分は絶対に侵害できないと思われがちですが、遺留分について生前対策を行うことは可能です。そこで今回は、遺留分の生前対策を行うための手法を解説します。

早期の生前贈与

まず1目は、早期の生前贈与についてです。状況によっては遺留分を全く取得させないということも可能です。

まず、遺留分請求の対象となるのは、贈与と遺贈の2つです。遺贈というのは遺言書で財産を引き継がせることをいいます。そして、贈与と遺贈によって特定の相続人が多くの財産を取得する一方で、他の相続人が相続時受け取る財産がほとんど無い場合に遺留分請求の問題になります。そして、遺贈は必ず遺留分を計算する上で対象財産となります。一方で、生前の贈与はすべてが遺留分の対象となるわけではなく、一定の期間制限があります。

一定の期間内に行われた贈与が遺留分の対象となりますが、期間外の贈与は、遺留分の対象となりません。ですので早期の生前贈与が遺留分対策に効果的になることがあります。

そこで、どこまでの贈与が遺留分の対象となるかですが、相続人に対する贈与と、相続人以外への贈与で期間が異なります。

また、期間については、2019年7月1日に法改正がありましたので、これ以降に開始される相続を前提としています。

(1)まず、相続人に対する贈与については、①特別受益に該当する贈与かつ、②相続開始前10年間にされたものに限り、遺留分の対象となります。

特別受益というのは、簡単に言いますと、自宅を購入する資金ですとか、事業資金とか、一部の不動産をもらうとか、そういった扶養の範囲を超えた資金的援助を受けることをいいます。かつこれが、相続開始前10年以内に行われた場合には、遺留分を侵害しますよ、ということになっています。

例えば、亡くなる12年前に長女Aに自宅の購入資金として2000万円の贈与をしていた場合、10年以上たっていますので、遺留分の対象から外れます。親が亡くなった際に仮に遺産がゼロでも遺留分請求はできません。

(2)つめは、相続人以外の者に対する贈与です。

相続人以外の者に対する贈与に関しては、相続開始前の1年間にされたものに限り、遺留分の対象になりますよということになります。

例えば、長男の孫は、相続人ではなく相続人以外の者に当てはまります。亡くなる2年前に長男の孫に2000万円を贈与していても、原則として遺留分の対象とはなりません。

まとめますと、相続人に対して贈与する場合には、原則として相続開始から10年以上前の贈与、相続人以外へは1年以上前の贈与であれば、遺留分の対象からはずれる、ということになります。

ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、期間制限なく遺留分の対象になるとされていますので、注意が必要になります。

当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたというためには、贈与の当時に「その贈与が遺留分を侵害するという認識があること」及び「将来、故人の財産が増加しないという予見があること」の2つが必要と考えられています。

この将来における財産が増加しないことの予見というのは、例えば贈与する人が重病を患っていて全く活動が出来ず収入が全くなかった等の事情が考えられます。

つまり、全く収入が立つ予定がないのに贈与する行為は、遺留分権利者に損害を加えることを知っていたと判断される可能があることになります。

ちなみに、この加害の意思を立証するのは、遺留を請求する人になりますが、時間が経つにつれて立証はかなり困難になると思います。

したがって、人の死期を確実に予測することはできませんので、できるだけ早く贈与を実行しておく、というのが、この遺留分対策のポイントになります。

生前贈与と相続放棄を利用する方法

2つ目は、生前贈与と相続放棄を利用する方法です。

1つ目の解説のとおり、相続人に対する生前贈与は、相続開始から10年以内のものであれば遺留分の対象となっていまします。そこで、相続放棄の利用を検討します。相続放棄を利用することにより、放棄した相続人は、相続人でなかったことになりますので、放棄した人への生前の贈与は、相続人以外への贈与として扱われるようになります。

ですので、生前贈与が亡くなる1年前のものでなければ、遺留分の対象となりません。

もちろんここでも、遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与であれば、遺留分の対象となる可能性はあります。

これは先ほども触れましたが、贈与する人がかなり高齢で収入もない状態であれば、全財産を贈与する行為は、「遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与」に該当する可能性が高くなると言えます。

ただし、これは立証できるかの問題になりますので、遺留分請求が認められる可能性はありますが、基本的に立証は難しいために遺留分の権利行使されないことも多くあると思われます。

したがって、これに関しても、早期に生前の贈与を行うことにより,遺留分対策をとることが可能になります。

生命保険の活用

3つ目は生命保険の活用です。

予め現預金があるような場合では、生命保険を活用することが考えられます。生命保険金は、相続税の節税効果も見込めますが、遺留分対策としても活用することが可能です。

ここでいう生命保険とは、主に終身型の死亡保険のことで、被保険者が亡くなられた際に、受取人へ保険金が支払われるもいいます。保険料は毎月支払う方法や、一括で全部の保険料を支払う一時払いの方法などがあります。

相続対策として生命保険を検討する場合は、一時払いで現預金を保険金として扱うイメージになります。そして、死亡保険金の大きな特徴としては、相続財産として扱われないということが挙げられます。

この点、ごちゃごちゃしそうですが、死亡保険金は、相続税法上は相続財産とみなされますので、相続税はかかりますが、相続時には、相続財産からは除外されています。ですので、相続人固有の財産ということで、遺産分割などせずに、受取人となっている方は、保険証書を持って一人で受け取ることができます。

相続財産とされていませんので、遺留分の対象ともなりません。したがって、死亡保険金を活用することで遺留分の生前対策を行うことができます。

例えば、5000万円の現金と5000万円の不動産があったとします。相続人が子ABの場合それぞれの遺留分は遺産に対して4分の1です。1億円をAにすべて相続させる遺言を残すと、Bは遺産に対して、2500万円の遺留分があることになります。

ここで、3000万円の生命保険に加入すると、相続時の財産は7000万円になりますので、遺留分は1750万円まで減らすことができます。7000万円をAにすべて相続させる遺言を残すと、AはBから遺留分を請求されても結果的に8250万円を相続できます。

なお、過度の保険の活用は、相続財産として扱われる可能性がありますので注意が必要です。これまでの判例では、生命保険金の総額が遺産総額に対して50%程度あると、相続財産と扱われているようです。

遺留分の生前放棄

4つ目は遺留分の生前放棄です。

遺留分の生前対策の一番確実な方法として、相続人と交渉をして遺留分を放棄してもらうことがあります。生前に相続放棄はできませんが、遺留分は生前に放棄できます。

ただし、遺留分の放棄を行うためには、遺留分を放棄する相続人が家庭裁判所の許可を得る申立手続が必要になります。これは、被相続人による不当な圧力によって不本意に遺留分の放棄が行われてしまう可能性があるからとされています。遺留分権利者から強制的に権利を奪われないようにということで、実務上、家庭裁判所で許可を得るにはこのような要件が必要となっています。

自由な意思によることとありますので、遺留分の生前放棄を行うためには相続人と交渉して、自主的に放棄の手続きを行ってもらう必要があります。また、遺留分権利者へ充分な代償が行われていることがありますので、例えば、遺留分を放棄する見返りに、一定の財産を生前贈与する等の、遺留分に相当する程度の贈与を行う必要があります。

これらを踏まえたうえで、遺留分権利者自身が家庭裁判所に放棄の申立てを行って手続きをします。なお、遺留分の放棄をしても相続人として遺産を相続する立場はかわりませんので、特定の相続人へ遺産を遺すないようの遺言を書かなければ意味がありません。

遺留分と養子縁組

5つ目の遺留分対策は養子縁組です。

相続税対策として、養子縁組がありますが、遺留分の生前対策としても縁組は有効になります。養子縁組によって相続人を増やすことで、各相続人の法定相続分は減少しますので、応じて各相続人の遺留分も減少します。例えば、子がABの場合に、それぞれの遺留分は4分の1ですが、Aの配偶者と子を養子とすれば、相続人は4人となりますので、各相続人の遺留分は8分の1となります。

養子縁組についても、生命保険と同様に、相続税での考え方と相続の考え方で異なります。相続税対策では、相続人の数が多いと、その分相続税が減らすことができますが、養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までカウントできるという人数制限があります。一方で、遺産を相続する上での人数制限はありませんので、何人までしか養子縁組できないという決まりはありません。従って、遺留分の生前対策を行う場合は、養子縁組は有効です。

以上、遺留分の生前対策5つの手法についてでした。

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監修者プロフィール

榎本亮冴
榎本亮冴司法書士
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。