相続時精算課税制度について解説

今回は、相続時精算課税制度について解説していきます。
これから贈与を検討している方やこの制度について簡単に知りたい方向けの動画となっていますので、是非参考にしてください。

この制度は、2,500万円までは非課税で贈与できる点についてよく知られていると思います。一見生前贈与をする際に役に立つように思えますが、トータルで見ると、多く税金を支払うことになりかねないものでもあります。

そこで今回はこの制度の仕組みやメリット・デメリットについて解説します。

ちなみに、令和3年度の税制改正の方針では、相続税と贈与税の一体化に向けて、本格的に検討がされているようです。暦年課税制度がすべて相続時精算課税制度として扱われるというケースや、相続開始前の3年内加算が15年になるといったことがあるかもしれません。

数年のうちに贈与の対策が大きく変わる可能性が考えられます。税制改正は毎年行われていますので、定期的に確認するといいと思います。

相続時精算課税制度の概要

まず、相続時精算課税制度の概要についてです。相続時精算課税制度は親、祖父母から贈与された財産の価額が2500万円まで、贈与税が非課税になる制度です。ただし、全く税金がかからないわけではありませんので注意が必要です。相続時精算課税制度使って贈与した分は、相続時に、相続財産と合わせて相続税が課されることになります。

例えば、Aさんが相続時精算課税制度を使って2500万円を、子のBさんに贈与したとします。この時点では贈与税を納める必要はありません。そして、実際にAさんが亡くなり相続が発生し遺産が3,500万円あったとします。この場合、3,500万円だけが相続税の対象になるのではなく、生前に贈与していた2500万円も加えて相続税を計算します。つまり、これらを合計して6000万円が相続税の課税対象になるということになります。

この点を知らずに、2500万円分は非課税になると理解してしまうと、相続のときに申告が漏れてしまうことがあるので注意が必要です。

2500万円までは、贈与税としては課税されませんが、相続のときに相続税として課税されます。

相続税の基礎控除は、3000万円+相続人の数×600万円となっています。基礎控除というのは、遺産の額が、この基礎控除額をこえなければ相続税はかからないというものです。

例えば、相続人が3人の場合は、基礎控除額は3000万円+相続人の3人×600万円で、4800万円までは相続税はかかりません。

ですから、先ほどの例で、相続時精算課税制度を使って2500万円を贈与しており、相続時の遺産が3500万円だった場合は6000万円ですから、基礎控除額の4800万円を超えた1200万円に相続税が課税されることになります。

仮に、遺産が1000万円場合は、相続時精算課税制度による2500万円の贈与と相続時の遺産1000万円を合計すると、3500万円です。相続人が1人の場合は、基礎控除額の3600万円以内に収まりますので、このような場合は、贈与税も相続税もかからないことになります。

相続時精算課税制度で2,500万円をこえる贈与はどうなるのか

では次に、相続時精算課税制度によって2,500万円をこえる贈与については、どうなるのか見ていきたいと思います。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税が課税されます。例えば、1億円を贈与すると、2500万円は非課税ですが、7500万円には贈与税が課税されますので、7500万円×20%の1,500万円が贈与税となります。

ただし、ここで納めた贈与税も、最終的には相続時に精算しますので、相続税を納める際に引いて計算します。

例えば、相続時精算課税制度によって1億円を贈与しており、1,500万円の贈与税を納めていたとします。そして、相続の時に納める相続税が2,000万円だった場合は、すでに納めていた1500万円引いた、差額の500万円を納めればいいことになります。

逆に、納める相続税が1000万円だった場合は、すでに納めていた1500万円から、差額の500万円の還付を受けることができます。

したがって、相続時精算課税制度は、文字通り、すべて相続時に持ち越して精算する制度ということになります。

なお、回数や一回あたりの金額に制限はありませんので、例えば、令和元年に1,000万円、令和2年に500万、令和3年に2,000万円というような贈与の仕方も可能です。

この場合も、2500万円までは非課税となり、超えた1000万円は税率20%を掛けて、贈与税を納めます。

これが相続時精算課税制度です。

相続時精算課税制度の3つの注意点

それでは、このこの制度の注意点を3つ解説します。

通常の贈与の制度に戻れない

1つ目は、通常の贈与の制度に戻れないというポイントです。

通常の贈与というのは、1月1日から12月31日までの1年間に、110万円以上の贈与を行うと、受け取る側に贈与税がかかることになっています。例えば、子の1人が両親から100万円ずつ贈与を受けたら、その年、子は200万円が贈与税の対象となりますので申告が必要です。

そして、税率は、贈与する財産の金額に応じて大きくなります。

このような表がありますが、110万円までは非課税で申告も不要です。110万円を超える場合は、この税率に従って、贈与税を納める必要があります。例えば、300万円の贈与をすると、110万円を引いた190万円に10%を掛けた19万円が贈与税です。

これが、通常の贈与ですが、メリットは年間110万円まで非課税という点です。この非課税枠を利用して、毎年贈与を行っていく方法が相続税の節税効果として高く、よく行われています。

ですが、相続時精算課税制度を活用すると、通常の贈与の税率が適用されなくなりますので、110万円までの非課税枠を利用することができなくなります。

これを知らずに、相続時精算課税制度を使った後も、毎年110万円の贈与を非課税と思って続けてしまうと、相続時に申告漏れをしてしまうことがありますので注意が必要です。

相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は贈与をした時の価格のままで相続時に加える

2つ目のポイントは、相続時精算課税制度を利用して贈与した財産は、贈与をした時の価格のままで、相続時に加えることになるという点です。

例えば、1,000万円の株式を贈与していたとします、相続時にこの株式が2,000万円に値上がりしたとしても、相続税の計算では、当時の1,000万円で計算することになります。

その結果、相続税の計算時に、遺産となる金額を減らすことが可能となり、節税につながります。

逆に言えば、自然災害などで、株価が大幅に値下がりしてしまっても、贈与時の高い価格で、相続税を計算するので、負担が大きくなります。ですので、株式などの有価証券を贈与する場合は、特に慎重に決める必要があります。

不動産を贈与すると不動産取得税や登録免許税がかかる

そして、3つ目のポイントは、不動産を贈与する場合は、2500万円まで贈与税はかからなくても、不動産取得税や登録免許税がかかるという点です。

不動産取得税は、不動産を取得した人に課税される税金です。

相続の場合は、不動産取得税はかからないことになっていますが、贈与の場合は、取得不動産の固定資産税評価額の4%が課税されます。

登録免許税は不動産の名義変更登記に対して課税される税金です。

税率は、相続の場合は0.4%なのに対し、贈与の場合は2%と5倍の税率で課税されます。

ですので、登録免許税も不動産取得税も相続時とくらべて、贈与の場合は高いといえます。

以上から、相続時精算課税制度を利用したいほうが良いケースは、確実に値上がりが予想される財産がある場合や生前贈与を今すぐ行いたい場合です。一方で、相続時精算課税制度を利用すると、110万円の非課税枠を使った暦年贈与ができなくなりますので、慎重に検討する必要があります。

相続時精算課税制度を利用する方法

最後に、相続時精算課税制度のまとめとともに利用する方法について解説します。

まず、相続時精算課税制度は次の年齢要件をみたす場合に利用できます。

  • 贈与をする側が満60歳以上の父母又は祖父母
  • 贈与を受ける側が満20歳以上の子又は孫 です。

そして、相続時精算課税制度を利用すると、次のような効果が得られます

  • 2,500万円までは贈与税はかからず
  • 2,500万円を超える場合でも一律20%の贈与税の課税されます
  • 相続時には、相続時精算課税制度で贈与した財産の額も含めて計算します。
  • そして、相続税の計算をする際に、支払った贈与税分を差し引く というものです。

そして、この相続時精算課税制度を利用するためには、贈与した翌年の贈与税申告時に、納税地の税務署で、相続時精算課税選択書というものも提出することで、利用することが可能になります。戸籍謄本なども添付する必要がありますので、申請する際は、事前に必要書類を確認しましょう。

以上、今回は、相続時精算課税制度の利用に際しての注意点などの解説でした。

監修者プロフィール

榎本亮冴
榎本亮冴司法書士
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。