無効にならない遺産分割協議の流れやポイント

今回は、遺産分割協議やのポイントについてです。遺産分割協議は、一度サインすると後からやっぱりやめたいということが簡単にはできませんので、その前に知っておきたいポイントについて解説します。

・遺産分割協議が成立する要件は?

相続が発生した場合は、法律が定める範囲の人で、遺産を分け合うことになります。これが「遺産分割」と呼ばれる手続きです。

遺産には、預貯金などのお金だけでなく、実家の土地・建物や株式などの有価証券も含まれるため、誰が、どの財産を、どのくらいの割合で相続するのかについて話し合う必要があります。

そして、遺産分割協議が成立する条件は、相続人全員が分割内容について同意することとなります。相続人が1人でも同意しない場合は、遺産分割協議は成立しません。

そのため、行方不明者がいる場合や、意思確認ができない人がいる場合は、代理人の選任の申立てなど別の手続きが必要になります。

また、相続人のなかに未成年者がいる場合は、その代理人の参加も求められます。

ですが、必ずしも相続人の全員が一堂に会して協議を進行する必要はありませんので、電話・メールなどを使って話し合うことも可能です。

実際には、口頭で合意した段階では、証拠が残らず、遺産分割協議は未了な状態と言えます。完全に協議完了とするためには、最終的には遺産分割協議書を持ち回るなどして、各々署名押印する必要があります。

・遺産分割協議が無効になるのか?

次に、遺産分割協議書に署名押印して、一度協議が成立した後に、これが無効になる可能性についてです。

例えば、1人でも欠けた状態で遺産分割協議が行われた場合や、判断力のない相続人が加わって遺産分割協議が行われた場合、遺産分割について錯誤があった場合、遺産分割が無効になる可能性はあります。

中でも、遺産分割について錯誤があったので無効にしたい、というケースがほとんどではないかと思います。

錯誤とは簡単にいえば、認識間違いことをいいまして、事実と異なる内容を信じて遺産分割協議に同意した場合には、その協議が無効、あるいは取り消して、やり直しになる可能性があります。

遺産分割協議を主導的に進めた相続人が、意図的に財産の一部を除いた形で遺産分割協議書を作成し、他の相続人に署名・押印をさせていたなどの場合が、典型的なケースです。

ですが、遺産分割協議書に署名押印した以上は、協議書に書かれていたことに関して無効を求めるのは、難しい傾向にあるというのも事実です。

署名押印の存在は、協議書の内容に納得していたことの証明になりますので、相続財産の一部が隠されていていたような場合でも、やり直しできない可能性はあり得ます。

多少、調べればわかるような財産調査を怠ったなど、重大な過失がある場合なども、より、協議の無効、あるいは取り消しが難しくなる場合も十分あります。

ですので、特に、遺産の範囲は網羅的か、不動産の査定価格は適正か、代償分割における代償金などが適切かどうか、十分に検討した上で、サインをするように注意が必要です。

・遺産分割協議はやり直しできるのか?

次に、遺産分割協議はやり直しできるのか、についでです。

相続人全員の合意があれば、遺産分割協議を解除して、遺産分割協議をやり直すことは可能です。ですが、例えば、代償分割における代償金を払わないなど、遺産分割協議の内容を守らなかった人がいても、それを原因に、相続人の1人から遺産分割協議の解除をすることはできないとされています。そのような場合は、改めて履行を請求したり、損害があれば損害賠償請求するなどの手続きが必要です。

また、遺産分割講義をやり直すことになった場合の注意点として、贈与税や所得税が課せられる、税務上のリスクがあげられます。

当初の遺産分割をやり直して、遺産を再配分した場合には、新たな財産の移転として、内容によって贈与税や所得税が課税されてしまう場合があります。

単に遺産分割協議書を紙で作った段階であれば、課税などの問題にはならないと思いますが、相続税の申告をしていたり、不動産の登記が絡む場合は、客観的に記録がのこりますので、課税リスクがより高くなるかもしれません。

ですので、遺産分割のやり直し自体は、全員の合意があれば可能ですが、税金の問題も考えると、最初の1回目が重要です。

・遺産分割協議後に新たに財産が発見されたときは?

次に、遺産分割協議後に新たに財産が発見されたときの対応方法についてです。

故人の財産を正確に把握できず遺産分割協議後に、新たな遺産が発覚するケースもあります。

このような場合の、基本的な対応方法は、新たに見つかった財産について、改めて遺産分割すればよく、一からやり直す必要はありません。

ですが、新たな財産が発見されるたびに、相続人全員で分割方法を決めるのは手間がかかります。そういった事態を避けるために、1度目の遺産分割協議を行った際に「新たな財産が発見されたときの対処方法」をあらかじめ定めておくのがいいと思います。

たとえば、このような方法が考えられます。

・新たな財産が発見されたときには子Aが全部受け取る

・新たな財産が発見された場合、法定相続人が法定相続分に応じて取得するなどです。

新たな財産が発見されたときの対処方法をあらかじめ定めておけば、後々スムーズに遺産分割可能です。

また、遺産分割協議後に新たな遺産が発見されたとき、例外的に「遺産分割全体のやり直し」が必要になるケースもあります。

たとえば、当初の段階ではほとんど財産がなく、一部の相続人が、遺産は要らないとした場合でも、その後に多額の財産が見つかったようなケースです。このような場合には、再度、遺産分割協議をやり直すように主張する相続人がいれば、すでに成立した遺産分割協議が無効となる可能性があります。

ですので、遺産目録に記載のない財産や、新たに判明した遺産については、別途協議をするなどと、1度目の遺産分割協議を行った際に決めておくのがいいと思います。

・遺産協議書の作成ポイントは?

次に遺産分割協議書の作成方法についてです。遺産分割協議書は、相続人どうしで遺産の分け方について、話し合った結果を書き残したものになります。法律で決まった書き方はありませんので、一般的な様式に従って作成すれば基本的には問題ありません。

今回は、ポイントを4つ解説します。

一般的な様式では、タイトルを遺産分割協議書として、冒頭に、被相続人の氏名、本籍、住所、生年月日、死亡年月日を書きます。

そして、後記不動産はAが取得するなど、状況に応じて誰がどの財産を取得するのかを記載していきます。

不動産の表示は登記簿に記載のある通り書く

ここで、1つ目のポイントは、不動産の表示は、登記簿に記載のある、不動産の所在や家屋番号などの情報通りに書きます。ここの記載を、Aが自宅を取得する、や、住所で不動産を特定しようとして記載してしまうと、法務局での名義変更手続きで支障が出る場合があります。

住所と、登記簿に記載のある、不動産の所在や家屋番号などの情報は、基本的に異なりますので注意が必要です。捨て印などがあれば、後から訂正も可能ですが、できれば、初めから有効な協議書を作成するのが望ましいです。ですので、必ず登記簿の記載通りに物件を記載します。

代償分割か換価分割をする場合の書き方

2つ目のポイントで、代償分割か換価分割をする場合です。それぞれ書き方がありますので、これも状況に応じて記載するようにします。

代償分割の場合、例えば、2000万円の自宅を長女が引き継ぎ、代償として次女に1000万円を支払うというような記載方法です。代償としていくら支払うか、具体的な金額の確定が必要です。万が一、代償金が支払われなくても、遺産分割協議は解除できませんので、代償金を支払える資力があるか確認することは重要です。また、遺産分割協議書へのサインや印鑑証明書の交付時に、代償金の支払いを受けるなどの条件にした方がいいと思います。

換価分割の場合は、自宅を売却して、売れた金額を長女と次女各2分の1で分けるような記載方法です。売却のために、便宜、長女が単独で相続の登記を行うなどとも記載します。

換価分割をする場合は、前提として相続登記が必要になります。この登記は、一旦相続人の共有名義とするか、代表者を決めて単独名義の登記をすることになります。

単独名義の登記をしたときは、一旦その人が不動産を売却して、売却代金を他の相続人に分配することになりますので、この点をしっかり遺産分割協議書に記載します。換価分割によって分ける点を書かないと、贈与税課税などのリスクも考えられますので、注意が必要です。

遺産分割協議書へは各相続人の実印での押印が必要

3つ目のポイントは、協議書へは、各相続人の実印での押印が必要な点です。不動産の名義変更で利用する遺産分割協議には、相続人全員が実印で押印し、その印鑑に対応する印鑑証明証が必須です。不動産の名義変更手続きでは、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書がセットで用意する必要があります。ですので、この2つが揃って初めて、遺産分割協議が完了したといえます。

後日、実印の押印を拒まれたり、印鑑証明書の提供を拒まれた場合は、代替手段がありませんので、訴訟で遺産分割協議の有効性を確認したりと、非常に手間がかかることになります。

協議したタイミングで、実印での押印や印鑑証明書を揃えることは非常に重要です。

そして、遺産分割協議書が複数枚に渡る場合には、端を製本テープで留めて、このように上から押印するか、ページのつなぎ目に押印します。

各ページの差し替えが容易にできると、後々トラブルの元になりますので、このような工夫も大切です。

遺産分割協議の際に新たに見つかった財産の分け方を決めておく

4つ目は、遺産分割協議の際、新たな財産の分け方を決めておく点です。

これは先ほどの通り、新たな財産が発見されたときの対処方法をあらかじめ定めておけば、スムーズに遺産分割可能です。

以上、今回は、遺産分割協議や協議書作成のポイントについてでした。

監修者プロフィール

榎本亮冴
榎本亮冴司法書士
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。