もくじ

榎本亮冴
今回は、限定承認は利用すべき?手続きの流れやメリット・デメリット、について解説していきたいと思います。

借金を相続しない方法として、相続放棄が手続きも煩雑でなく一般的ですが、限定承認は、次のような方に非常に役立つ制度となっています。
例えば、
・プラス財産とマイナス財産どちらが多いか分からないが、プラス財産が多ければ相続したい場合
・遺産はマイナス財産の方が多いけど、先祖代々の不動産だけは引き継ぎたい
・現時点明確な借金はないが、親が事業をしていたので、今後出てき時に備えたい
主にこのようなケースでは、限定承認という制度を有効活用できます。
限定承認がどういった制度なのか
まずは、限定承認がどういった制度なのかについて解説します。まず、相続というのは、プラス財産もマイナスの財産も相続人がすべて引き継ぐことが前提になっています。これは単純承認といいます。
ただ、借金などのマイナス財産がプラス財産よりも非常に多くて、引き継ぎたくないケースもありますので、その場合は相続放棄をします。相続放棄すると一切なにも引き継ぎません。ですので、通常の相続が全部引き継ぐもので、相続放棄はその正反対の制度いうことになります。
そして、実はもう一つ、その中間的な制度として今回の限定承認があります。つまり、相続人は、全部相続するのか、相続放棄して全く相続しないのか、限定承認するかについて、相続時の3つの選択肢があります。

この限定承認というのは、財産の調査を進めた結果、もしマイナス財産の方が多かったとしても、
遺産の限度でしか、借金を返済する義務を負いませんよ、という制度になります。
例えば、・親と交流がなかったので、財産状況がよくわからないとか、訴訟係属中に親が亡くなったので賠償金額が確定していないなど理由で、マイナス財産がいったいどれくらいあるか分からない場合もあります。
逆に、親が貸していたお金が返してもらえるか分からないなど、プラス財産が未だに確定しない場合もあるでしょう。

このようなときに、限定承認をしておけば、あとあと借金の方が多くなっても、遺産にあるプラス財産の中から返せるだけ返せばいいよということになります。
プラス財産が5000万円、実際には借金は1億だった場合、5,000万円はマイナスとなりますが、この部分は相続人が返済しなくていいものになります。

逆に、借金が2,000万円であれば、プラス財産として残った3,000万円は相続人が引き継ぐことができます。

これが限定承認です。
限定承認はどのような手続きをしていくのか
それでは、次に限定承認はどのような手続きをしていくのかを見ていきたいと思います。
限定承認の手続きは大きく分けて3つあります。家庭裁判所に限定承認の申述、官報公告掲載手続き、分かっている債権者へ個別催告、債権者に弁済の順で進めていきます。

まず、家庭裁判所へ申述ですが、限定承認ができる期間は相続放棄と同様に相続開始を知ってから3カ月以内です。しかも、相続人全員が足並みをそろえて家庭裁判所に限定承認の申述をする必要がありますので、この点は注意が必要です。

3カ月ルールについては、こちらの動画でも解説しています。
また、この申述の際には、わかる範囲でプラス財産とマイナス財産をまとめた表、いわゆる財産目録を一緒に提出する必要がありますので、ある程度財産調査を行っておく必要があります。
受理されたら5日以内(または10日以内)に官報公告の掲載手続きをします。官報販売所というところに申し込めばいいので、特に難しい手続きではありません。限定承認しましたので、債権者の方は申し出てください、申し出ないと弁済から除斥します、という内容のものです。

この公告期間は2カ月です。
これと同時期に、わかる範囲の債権者に個別に通知します。これも限定承認を行いましたので、債権者の方は申し出てくださいといった内容の書面を各債権者に送付することになります。
2カ月経って、債権者が出そろったら、それぞれに返済していきます。現金ですべて返済できればいいですが、できないのが通常ですので、土地などの財産を基本的に競売によって換金していきます。

ここでのポイントは、限定承認した相続人は、遺産の中に欲しい財産がある場合は、自ら買い取ることが許されている点です。例えば、思い入れのある家だけは手放したくない場合は、一定の手続きを経て競売せずに自己資金で買い取ることができます。この点は限定承認特有のメリットとなっています。

弁済手続きをして、すべての財産を充てても弁済しきれない場合は、残りの借金は、もう返さなくて問題ありません。
逆に財産が余ったら相続人が引き継ぎます。
これら一連の手続きに基本的に家庭裁判所は関与しませんので、相続人、あるいはその代理人が各種手続きを進めていくことになります。
これで完了ですが、全体を通して半年から1年以上かかることもある手続きですので、限定承認はかな面倒な手続きであることが分かると思います。
限定承認のメリットまとめ
最後限定承認のメリットをまとめます。
・プラス財産とマイナス財産どちらが多いか分からない
・特定財産だけ引き継ぎたい
・現時点明確な借金はないが、今後出てき時に備えておきたいときなどの場合で、相続放棄では実現が難しときに、主に有効活用できる制度です。

一方で、相続放棄と異なり、手続きが煩雑な点や、今回は割愛しましたが、みなし譲渡による準確定申告が必要になる点などの税務上デメリットとなるケースもあります。

利用を検討する場合は、司法書士や税理士等の専門家に相談してから進めましょう。
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監修者プロフィール

- 司法書士
-
・大手金融機関主催の相続対策セミナー、相談会
・大手不動産会社主催の相続対策セミナー、相談会
・大手生命保険会社の相続専門員向け勉強会の開催
・自主開催の終活セミナー、相談会多数
これまでの豊富な経験に基づき、遺言作成支援、相続を中心に、個人のお客様向けに幅広い業務に対応させて頂くことができます。どうぞお気軽にご相談下さい。
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